経営者の集中力強化

夕方に肩と目が重くなる本当の原因|40代経営者の出力低下

「夕方になると、肩が重い」
「目の奥が疲れて、画面が頭に入ってこない」
「考えすぎて、頭が重い」

疲れを訴える経営者の方から、私が最初に聞く言葉は、だいたいこの三つです。

興味深いのは、誰も「判断力が落ちた」とは言わないことです。実際に落ちているのは判断の質なのですが、本人が自覚するのは肩と目と頭の重さとして出てきます。

そして、その三つはたいてい夕方に集まります。

結論から言います。夕方に集中するこれらは、体力の問題ではありません。神経の切り替えです。体力不足だと思って運動を足すと、多くの場合さらに削れます。

私はパーソナルトレーナーとして13年、現場で10,000時間以上、40代以降の経営者・事業主の身体を見てきました。この記事では、夕方の出力低下が何によって起きているのかを説明します。あわせて、自分がどちらの型かを確かめる方法と、今日から使える一手をひとつお伝えします。

まちょすまちょす夕方になると目も肩も重いんす…もう年っすね
ハムスケハムスケ朝は元気だったんですよね?
エグゼ筋エグゼ筋自律神経の切り替えが働いていないだけです。体力の話ではありません。

夕方に集まる三つの重さが、意味していること

肩、目、頭。この三つに共通していることがあります。

どれも自分の意志で動かしていない部分だという点です。

なぜ、判断力ではなく肩と目に出るのか

肩の筋肉、とくに首から肩にかけての部分は、姿勢を保つために働いています。意識して力を入れなくても、頭が倒れないよう一日中張り続けている。

肩こりが慢性化している場合、足首側に原因があることもあります。詳しくは肩こりの原因は肩ではないで解説しています。

目のピント調節も同じです。近くを見るとき、目の中の筋肉が縮んでレンズの厚みを変えています。これも自分で操作しているわけではありません。

この二つを動かしているのが、自律神経です。心拍や体温と同じく、意識の外で調整されている系統を指します。

だから、自律神経の働き方が偏ると、まずこの二つに出ます。

判断力は、落ちていても自覚しにくい。自分の判断が鈍っているかどうかは、鈍っている頭では測れないからです。

肩と目のほうが先に感じ取れる。順番としてはそれだけの話で、本丸は同じところにあります。

「体力がない」という見立てが、ほぼ外れている理由

体力の問題であれば、身体を使った日ほど夕方がつらいはずです。

ところが現場で聞くと、逆のことを言う方が多くいます。動いた日のほうが夕方の頭が回る。一日座っていた日のほうが、終わりに近づくほど重い。

身体を使っていない日に出力が落ちるなら、原因は消耗ではありません。

落ちているのは切り替えです。集中する状態と、ゆるめる状態。この二つを行き来する機能が働かなくなっています。

この区別については、疲れが取れない経営者へ|筋肉の疲労と神経の疲労は別物であるで詳しく書いています。

一般的な対処が効かない理由

夕方の失速に対して、よく取られる手があります。

・コーヒーを足す
・甘いものを入れる
・気合いで押し切る
・早く寝る

前の三つは、すべてさらにアクセルを踏む行為です。ブレーキが効かなくなっている状態で、アクセルを足している。

四つ目の「早く寝る」は方向としては正しいのですが、多くの場合これも効きません。入る前の状態が変わっていないからです。アクセルを踏んだまま駐車しても、エンジンは止まりません。

ハムスケ
ハムスケ「で、昨日は何時に寝ました?」

神経の切り替えという視点から見る

自律神経は、スイッチではなくシーソー

身体には、活動に向かう神経と、回復に向かう神経があります。交感神経と副交感神経です。

この二つはオンオフではありません。常に両方が働いていて、どちらが優位かが揺れている。シーソーに近い形です。

健康な状態では、この揺れが一日のうちに何度も起きます。集中して、ゆるんで、また集中する。

切り替えが効いている人は、夕方に入る前に何度かゆるむ瞬間を通過しています。

朝から一度もゆるまない日が、何日も続くと

経営者の一日を思い浮かべてください。

起きてすぐスマートフォンを見る。移動しながら連絡を返す。会議が続き、合間に判断が挟まる。昼食は10分で済ませ、午後もそのまま走る。

この流れの中に、ゆるむ瞬間がありません。

シーソーが片側に傾いたまま、日をまたぎます。傾いたまま固定される期間が長くなると、身体は戻し方を忘れます。

そうなると、夕方に落ちるのは当然です。上げる側の余力が尽きたのではなく、上げっぱなしだった分の帳尻が来ています。

肩が抜けないのも、目の調節が戻らないのも、同じ理由です。ゆるめる指示が一日中出ていません。

血糖の話ではない、と考える理由

午後の眠気は、よく血糖値で説明されます。昼食後に上がった血糖が下がるときに眠くなる、という話です。

実際にそうした反応はあります。ただ、それだけで説明すると合わない部分が出ます。

昼食を抜いた日にも眠気が来る方がいます。同じものを食べても、日によって落ち方が違う方もいます。

私が見てきた限り、食事の内容よりも、その日の朝の入り方に相関します。朝から緊張が高かった日ほど、午後の落ち込みが深い。

食後の反応は引き金であって、原因ではないと考えています。

経営者に固有の条件

この状態が進みやすい条件が、経営者の生活には重なっています。

・判断の回数が多い。判断は、それ自体が緊張を伴います
・オフの境界がない。移動中も食事中も連絡が届く
・責任が分散されない。最終判断を代わってくれる人がいない
・成果が出ているあいだ、不調が問題として扱われない

最後のひとつが、いちばん厄介です。

売上が出ているうちは、夕方に頭が回らないことを不調だと認識しません。そういうものだと思って通過してしまう。

気づくのは、出力が落ちたことではなく、出力が落ちた結果として何かを失ったときです。順序が逆になります。

なぜこのリスクだけが後回しになるのかは、経営者の健康管理が後回しになる理由にまとめました。

回復は、増える形では来ない

ここで、現場で起きたことをひとつ書きます。

トレーニングを続けていた方が、ある日ふと、こう言いました。

「そういえば最近、日頃の疲労感がなくなってるんだよね」

そのときまで、ご本人はそれをトレーニングの結果だと思っていませんでした。会話をしているうちに、そういえばあれからだ、と気づかれた。

この順序が重要です。

変化が起きた瞬間には、気づけません。回復は、何かが増える形ではなく、何かが無くなる形で来るからです。

肩の重さが消える。目の疲れを意識しなくなる。夕方に「重いな」と思う回数が減る。

無くなったものは、意識に上がりません。増えたものなら気づけますが、消えたものは気づけない。

だから多くの方が、効いているのに「変わっていない」と判断します。そして止めます。

私が経過を見るとき、本人の実感を最初の指標にしないのはこのためです。ご自身で判断されるなら、一週間前の夕方を思い出せるかどうかで見てください。思い出せないなら、それは重くなかった証拠です。

ただし、休めば戻る人もいる

ここまで切り替えの固定化として説明してきましたが、全員がこの型ではありません。

見分ける基準はひとつです。

連休を2日取ったあと、月曜の朝に回復した感覚があるかどうか。

・2日休めば戻る
 急性の消耗です。休息の総量が足りていないだけで、構造の問題ではありません。睡眠と休みの確保が先です

・2日休んでも変わらない、または休み明けのほうが重い
 切り替えが固定されています。休息を増やしても戻りません。傾いたシーソーを、いったん反対側に振る操作が要ります

後者の方が「休んだのに疲れている」と感じるのは、気のせいではありません。何もしない休みは、切り替えを起こさないからです。

ここが、休息と回復が別物である理由です。

今日からできること

先に言っておきます。これは、まず信用されません

これからお伝えするのは呼吸法です。

13年勧めてきて、その場で納得された記憶がほとんどありません。だいたい、目線が一段下がります。

理由は分かります。無料で、地味で、そのうえすでに毎日やっていることだからです。

なので、なぜこれなのかを先に説明します。ここを読まずにやっても続きません。

呼吸だけが、自律神経に手を出せる

自律神経は、意識で操作できません。

心拍を今すぐ落とそうとしても、落ちません。体温も、血圧も、消化も同じです。それが自律神経の定義です。

ところが、ひとつだけ例外があります。

呼吸です。

呼吸は、意識しなくても続きます。眠っていても止まりません。その意味では自律神経の管轄です。

それでいて、意識すれば止められるし、速くも遅くもできる。

意識の側からも、自動の側からも操作できる機能は、身体の中で呼吸だけです。

そして、吸う局面は活動側、吐く局面は回復側と結びついています。息を吐いているあいだ、シーソーは回復側に傾きます。

つまり吐く時間を長くすることが、傾きを戻す唯一の直接的な操作になります。

地味に見えるのは、そのとおりです。ただ、他に手がありません。

今日の一手

座ったままできます。

4秒かけて吸い、8秒かけて吐く。これを10回。

吐く時間を、吸う時間の倍にすることだけ守ってください。

やるタイミングは、午後の失速が始まる前です。落ちてからでは間に合いません。私は昼食の直後を勧めています。

所要は2分です。会議の前でも、車の中でもできます。

何も感じなくても、失敗ではありません

ここが最も伝えておきたい部分です。

現場で実際にやってもらっても、その場で変化を感じ取れる方は少数です。多くの方は「よく分からない」と言います。

感じ取れないことを、効かなかったと解釈しないでください。

切り替えが鈍っている状態というのは、身体の変化を読み取る感度そのものが落ちている状態でもあります。傾きが深い方ほど、初回の手応えは小さく出ます。

順序としては、先に切り替えが起きて、感じ取れるようになるのは後です。

だから、初回の感覚で判断しないでください。判断材料にするなら、一週間続けたあとの夕方です。

優先順位をつけるなら

新しい時間を作らない前提で、順番を書きます。

1. 昼食後に呼気を長くする2分(今日の一手)
2. 朝、起きて最初の15分はスマートフォンを見ない。起き抜けから緊張側に入る習慣を切ります
3. 週に2回、20分でいいので身体を使う。切り替えのきっかけを、意図的に作ります

3番目については、種目も強度もここでは指定しません。落ちている状態でいきなり負荷を上げると、傾きを深める方向に働くことがあるためです。

この段階で何をどの順で入れるかは、いまの傾き具合によって変わります。ここから先は設計の話になります。

まとめ

・夕方の不調は「肩が重い」「目が疲れる」「頭が重い」として自覚される
・肩も目も自律神経が動かしている部分。だから切り替えの偏りが先に出る
・動いた日より座っていた日のほうが重いなら、原因は消耗ではない
・2日休んで戻るなら消耗、戻らないなら切り替えの固定化
・回復は無くなる形で来るため、効いていても気づけない
・意識から自律神経に触れられる手段は呼吸だけ。4秒吸って8秒吐くを10回、昼食の直後に

夕方の2時間は、一日のうちで最も判断の重さが集中する時間帯です。ここが戻るかどうかは、体力の問題ではありません。

切り替えが戻ったあと、何をするか

この記事で扱ったのは、切り替えを一度起こすところまでです。

傾いたまま固定された状態から、どの順番で戻していくのか。負荷をどの段階で入れるのか。ここを外すと、傾きを深める方向に働きます。

その順番を無料レポートにまとめました。『賢い経営者ほど、なぜ身体づくりで失敗するのか ―情報を集めるほど遠ざかる、逆説の正体』。情報を集めるほど遠ざかる理由と、何から手をつけるかの判断基準を書いています。読了15分です。

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