健康診断の結果は、どこにも異常がない。
血液も、肝機能も、血圧も問題なし。それでも朝が重い。午後になると判断が鈍る。週末に寝だめをしても、月曜には戻っている。
このとき多くの人が「気のせい」か「年のせい」で片付けます。私は13年、現場で10,000時間以上、経営者の身体を見てきました。その中で、この状態の人は毎年必ず来ます。
結論から書きます。健康診断が見ているものと、だるさの原因は、そもそも別の層にあります。この記事では、何が起きているのかと、自分がどちらの型かを見分ける基準までを書きます。
まちょす健康診断オールAだったんで、体は問題なしっす!
ハムスケで、朝スッキリ起きられてます?
エグゼ筋異常なしが意味するのは、病気がないことだけです。だるさは別の指標で見ます。健康診断で「異常なし」が意味すること
診断が探しているのは、病気の有無だけ
健康診断は、病気を見つけるための検査です。
基準値から外れた数値があるかどうかを見ています。つまり「病気ではない」ことは分かる。しかし「万全である」ことまでは分かりません。
ここに大きな隙間があります。
病気と万全の間には、広い中間地帯があります。検査には引っかからないが、本人は明らかに不調。ほとんどの経営者がいるのは、この中間地帯です。
よくある対処がズレる理由
だるいとき、多くの人が選ぶのは3つです。
よく寝る。マッサージに行く。栄養ドリンクやサプリを足す。
どれも間違いではありません。ただ、効く相手が決まっています。
寝ることが効くのは、睡眠が足りていない人です。マッサージが効くのは、筋肉そのものに疲労が溜まっている人です。
デスクと会議と移動で一日が終わる働き方では、筋肉はほとんど使われていません。溜まっていない場所を、丁寧にケアしている状態になります。
私は「マッサージが効かない」と言われたとき、まずこう聞きます。
「どのあたりで戻りますか」
その日のうちに戻るのか、2日もつのか、1週間もつのか。保った時間で、どの段階にいるかが分かります。翌日に戻る人は、揉む場所の問題ではありません。
神経科学の視点から見ると、何が起きているのか
疲労には2種類ある
疲労は、大きく2つに分かれます。
ひとつは末梢性疲労。筋肉そのものに溜まる疲労です。重い物を運んだ日や、久しぶりに走った翌日に出ます。
もうひとつは中枢性疲労。脳と神経の側に溜まる疲労です。判断を繰り返し、情報を処理し続けることで蓄積します。
経営者の働き方で溜まるのは、圧倒的に後者です。
ここが分かると、なぜ休んでも抜けないかが説明できます。中枢性の疲労は、何もしないことでは戻りにくい。ソファで横になりながら考え事をしている時間は、体は休んでいても、神経は働き続けています。
この構造については、疲れが抜けない経営者へ:末梢性疲労と中枢性疲労の違いで詳しく書いています。
経営者に特有の条件
経営者には、会社員にはない条件が3つあります。
第一に、判断の量が多い。決裁、採用、取引先との交渉。一日の意思決定の回数が、そもそも違います。
第二に、切り替えがない。通勤中も、会食中も、寝る前も、頭の片隅に事業があります。
第三に、身体を使う場面がない。移動は車、会議は座ったまま。神経は使い続け、筋肉は使われない。この偏りが、中枢性疲労だけを溜める条件になります。
ここで、答えが2つに分かれます
休むべき人と、動くべき人
ここまで読んで、矛盾を感じた人がいるはずです。
「休んでも抜けない」と書いた直後に「休むことが効く人もいる」と書いているからです。
どちらも正しい。ただし、対象が違います。
原則はこうです。中枢性の疲労に対しては、休むより切り替えるほうが戻りやすい。軽く息が上がる程度の運動を10分入れたほうが、横になっているより回復します。
ただし、これがひっくり返る条件がひとつあります。睡眠が絶対的に足りていない場合です。
睡眠が5時間を切る日が常態化しているなら、何をやっても戻りません。この場合だけは、動くより先に寝る時間を確保するのが正解です。
自分がどちらか見分ける基準
見分け方は単純です。
休日に、いつもより2時間多く寝てみてください。
それで月曜が軽いなら、睡眠不足型です。寝る時間の確保が先になります。
寝ても月曜が変わらないなら、中枢性疲労型です。この型の人が寝だめを続けても、消耗が増えるだけです。
多くの経営者は後者です。そして後者だと分かった瞬間に、やることが変わります。
今日からできること
私が現場で最初に確認すること
デスクワーク中心の方を見るとき、私が最初に確認するのは股関節の可動域です。
肩でも腰でもありません。股関節です。
大半の方が、お尻ともも裏が硬くなっています。座っている時間の長さが、そのまま出る場所だからです。
ここが硬いと、立ったときに骨盤が引っ張られます。その歪みを戻すために、腰と背中が一日中働かされる。だるさの一部は、この余計な仕事量から来ています。
最初に出る兆候を知っておく
もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。
出力が落ちてきたとき、本人が最初に気づくのは数値ではありません。
普段持っているものが、何気なく手から落ちた瞬間です。
マグカップ、鞄、鍵。いつも通りに持ったはずなのに、落ちる。この経験が出てきたら、それは体力の話ではなく、神経の指令が鈍り始めた合図です。
優先順位
やることの順番を書きます。
第一に、切り替えを入れる。一日10分、軽く息が上がることをする。階段を使う、一駅歩く。それで足ります。
第二に、股関節を動かす。立ち上がったときに10秒、脚の付け根を前に突き出すように立ち直す。
第三に、座る時間を切る。45分に1回立つ。これだけで、縮んだ時間がリセットされます。
負荷を上げるのは、この後です。順番を飛ばすと続きません。この理由はジムに通っても変わらない5つのパターンに書いています。
「年のせい」で片付けると、何が起きるか
40代以降の変化は、年齢ではなく累積時間
だるさを年齢のせいにするのは、一番もったいない片付け方です。
20代でも、8時間座り続ける生活を数年続ければ、同じことが起きます。股関節は硬くなり、お尻の筋肉は出番を失います。
違うのは、戻るまでの速さだけです。
40代以降で回復に時間がかかるのは事実です。しかし「戻らない」のではありません。かかる時間が延びるだけです。ここを混同すると、まだ動ける段階で手を止めることになります。
最初に削られるのは、体力ではなく判断の速度
出力が落ちるとき、最初に「疲れ」として出るわけではありません。
最初に出るのは、判断の鈍りです。
午前中と同じ案件を、午後4時に見ている。なのに決められない。あるいは、いつもより雑に決めてしまう。
厄介なのは、本人がそれを疲労だと思っていないことです。「今日は難しい案件だった」「相手の説明が悪かった」と、原因を外側に求めます。
事業の損失として出ているのに、原因が身体だとは気づけない。これが、この領域が後回しにされ続ける理由です。
試せる確認方法がひとつあります
今日、夕方に決めた案件をひとつ選んでください。
そして明日の朝、もう一度同じものを見る。
同じ判断をするなら、問題ありません。違和感が出たなら、それは能力ではなく、身体の話です。
この差が大きい人ほど、戻したときの変化も大きく出ます。
まとめ
- 健康診断が見ているのは病気の有無であり、万全かどうかではない
- 経営者に溜まるのは中枢性疲労。休むより切り替えるほうが戻りやすい
- ただし睡眠が5時間を切っているなら、寝る時間の確保が先
- 休日に2時間多く寝て、月曜が軽いかどうかで型が分かる
- 最初に確認すべきは股関節の可動域。肩でも腰でもない
- 物を落とす感覚が出てきたら、それは神経の指令が鈍り始めた合図
この状態を放置したときに何が起きるかは、経営者が健康を後回しにする構造で書いています。緊急ではないが重要な領域は、意識して枠を取らないと永遠に来ません。
だるさの正体が「病気ではない何か」だと分かっても、次に何から手をつけるかは別の問題です。情報を集めるほど動けなくなる構造を、レポートにまとめました。
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