去年と同じスイングをしているのに、飛距離が落ちている。
力んでも変わらない。むしろ悪くなる。
ここで多くの人が「筋力が落ちた」と結論します。そしてジムで腕や胸を鍛え始める。これはほぼ外れます。
この記事では、飛距離が落ちる構造を分解し、どこを戻せば戻るのかを整理します。スイング理論の話ではありません。
飛距離は回旋の大きさで決まる
クラブヘッドの速度はどこから来るか
ヘッドスピードは腕の力で作られていません。体幹の捻れが戻る力が、腕を通じてクラブに伝わっています。
ゴムをねじって離す動きと同じです。ねじれる量が減れば、戻る力も減る。
つまり飛距離の低下は、多くの場合「ねじれる量が減った」という可動域の問題です。筋力ではありません。
ねじれは3カ所で作られる
上から、胸郭・骨盤・股関節。この3つが順番に回ることで、トップの位置が作られます。
どれか1つが止まると、残りが代償します。そして代償する場所は決まっています。腰です。
飛距離が落ちた人が同時に腰を痛めるのは偶然ではありません。腰痛と体幹トレーニングの誤解で扱った構造と同じです。
最初に止まるのは胸郭
デスクワークが胸郭を固める
座って前かがみでいる時間が長いと、肋骨の動きが減ります。呼吸が浅くなり、肋骨まわりの関節が使われないまま固まる。
胸郭が回らなくなると、トップが浅くなります。
本人の感覚としては「体が回らない」ではなく「振り切れない」「当たりが薄い」として出ることが多い。
確認方法
椅子に座り、両腕を胸の前で組む。骨盤を動かさずに、上半身だけを左右に回す。
左右で45度ずつ回れば十分です。30度を切るなら、ここが制限になっています。
左右差が大きいなら、スイングの片側だけが崩れているはずです。体の左右差はなぜ生まれるかで扱いました。
次に止まるのは股関節
フォロースルーが出ない理由
バックスイングで右の股関節に乗り、ダウンで左に乗り換える。この乗り換えができないと、体重が後ろに残ります。
手だけで振ることになり、球は上がるが飛ばない状態になる。
股関節の内側への回旋(内旋)が硬い人は、この乗り換えが構造的にできません。
確認方法
床に座り、膝を90度に曲げて両足を立てる。片方の膝を内側に倒す。
膝が床に近づくほど内旋が出ています。途中で止まる、または骨盤ごと傾くなら制限があります。
現場で股関節の可動域を見ると、お尻とハムストリングスが硬い人が大半です。ここが硬いと骨盤が立たないまま回ろうとするので、回旋は腰に流れます。
最後に足首
地面を押せなければ、力は伝わらない
回旋の起点は地面です。足首が硬いと、踏み込んだときに地面を押し返せません。
押せない分は、上で作ろうとする。腕に力が入るのはこのためです。
足首の硬さが全身の出力を決める話はふくらはぎが硬い人は疲れやすい理由にまとめました。
ここで原則が割れます
ここまで「筋力ではなく可動域」と書いてきました。
ただし、これが当てはまらない層があります。
筋力を疑うべき条件
次の3つがすべて当てはまるなら、可動域ではなく出力側の問題です。
- 上に挙げた3つの確認で、どれも制限が出ない
- 階段を上ると以前より息が上がる
- ラウンド後半で明らかに落ちる(前半は落ちていない)
この場合は全身の筋量が落ちています。40代以降で最初に落ちるのは下半身です。太ももの筋肉量が代謝を決めるで扱った通りです。
見分けがつかないとき
前半と後半の差を見てください。
最初から飛ばないなら可動域。後半だけ落ちるなら筋力と回復力です。
両方に当てはまるなら、可動域から手をつけます。可動域が出ないまま筋力を足すと、腰に流れる力が大きくなるだけです。
やる順番
1. 胸郭を回す
座って上半身の回旋。左右10回ずつ。呼吸を止めない。毎日。
2. 股関節の内旋を出す
仰向けで膝を内側に倒す。左右30秒ずつ。お尻の外側が伸びる感覚が出れば正解。
3. 足首を出す
かかとをつけたまましゃがむ。できないなら、つま先を壁につけて膝を壁に近づける動きから。
合計で1日5分です。変化はスイングより先に、疲労感の減り方で出ます。
よくある質問
どのくらいで戻りますか
可動域は2〜3週で変わります。ただしスコアに出るまでは、変わった体で振り直す期間が要ります。
ストレッチはラウンド前にやるべきですか
ラウンド前は動かす方(回旋)だけにしてください。静止して長く伸ばすと、直後の出力は一時的に落ちます。じっくり伸ばすのは前日以前です。
練習量を増やせば解決しますか
可動域が原因の場合、練習量を増やすと代償の癖が強化されます。腰と肘を痛める経路がこれです。
まとめ
- 飛距離はねじれが戻る力で決まる。腕の筋力ではない
- ねじれは胸郭・骨盤・股関節の3カ所で作られ、どれかが止まると腰が代償する
- デスクワークで最初に止まるのは胸郭。次が股関節、最後に足首
- 「最初から飛ばない」なら可動域、「後半だけ落ちる」なら筋力と回復力
- 可動域が出ないまま筋力を足すと、腰に流れる力が増えるだけ
飛ばなくなったのは、力が落ちたからではありません。
力の通り道が細くなっただけです。